日本ならではの意匠が生きる古民家は、現代的な住宅が増えた今でも根強い人気があります。しかし建築基準法の改正や建物の寿命、ライフスタイルの変化などで徐々に減りつつあるのも事実です。今では希少となった技術や趣が生きる貴重な古民家は、日本各地で再生への活動や継承するための思いが人々の中に生きています。今回ご紹介するのは、石井建築設計事務所の手がけた築140年の診療所兼住宅の古民家再生プロジェクトです。約30年空き家だったこの家は、柱も朽ち、屋根も崩落した廃墟になっていました。しかし依頼主や地域の思いが叶い、見事な再生を果たすこととなりました。
古民家再生リノベーションのメリットには、希少性のある建材を再利用して趣ある居住空間をつくることが出来ることや環境によい自然素材を使た優しい家づくりの他に、固定資産税を安く抑えることが出来る等のメリットがあります。
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※ 家の写真ページ
屋根はすっかり地肌があらわれ、一部の屋根は崩落するほど痛んだ状態でした。とても再生できるとは誰もが思わなかったかもしれません。全体は傾くほど躯体もひどい状態です。
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廃墟だった姿は、その面影を感じさせないほどの姿へと息を吹き返しました。南側は木製の建具で全面開口を設け、暖かな陽だまりを室内へもたらします。軒のある縁側では、ゆったりと座りながら昔ながらの暮らしに思いを馳せることができるでしょう。週末住宅のほか、地域のコミュニティスペースとしても使われるようになりました。
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古民家は旧耐震で建てられた物件ですので、現在の新耐震基準を満たしていません。大規模な地震の際は倒壊してしまう可能性が非常に高く、耐震リフォームは必須です。
廃墟と化していた内部は驚くほど荒れた状態でした。約30年も空き家だったことから、適切な手入れがされず柱も足元から腐朽するほど弱っており、傾いた内装の痛みも深刻です。
古民家の醍醐味は、現代のプレカットには持っていない骨組みの風情ではないでしょうか。今回の家は、足元から弱っていた柱を伝統的継手のひとつである金輪継ぎによって補修がされました。継手の中でも強固なもののひとつであり、あらゆる方向に強度が得られる特徴があります。見違えるほどに生まれ変わった柱や梁の見えるダイナミックな空間は、以前の状態からのギャップや築140年の時が持つ空気感を楽しむことができます。
シミにより暗くどんよりとした印象は一新され、い草の香る和のフレッシュな内装は清々しさを感じます。地域の人々の思いによって生き返った空間は、地域のコミュニティ空間として再びたくさんの人が集いさまざまな歴史を重ねて行くでしょう。床レベルからしっかりと改修がされ、手を加えることでここまで再生ができる実例はこれからの時代の希望のある存在にもなります。
廃墟となっていた状態でも、昔からの「おくどさん」と呼ばれ親しまれていたかまどはそのままの姿で残されていました。今ではめったに見かけることのなくなったかまどはその佇まいだけで歴史を重ねた重みを感じ取れます。かつて使われていた際にはどんな料理が振舞われていたのでしょうか。こうした歴史的に貴重なものにもこれからの希望を与えながら、建築家は古民家の再生に全力を注ぎます。
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※セルフリノベーションで安く思い通りの住まいに!始める前に知っておきたい6つのこと
リノベーションで美しい趣が蘇った玄関。大きな土間玄関と優しい門燈が、地域の人々を温かく迎えてくれます。伝統的な日本家屋にある上がり框や襖引き戸が和の上品な雰囲気を演出してます。和の趣は、地域コミュニティの場としても愛される場所となります。